【コラム】「バーニングマンが補うもの」2021年12月19日 57回

◆バーニングマンは人間味というか野生のヒトをぐんと近くで感じられる。

◆バーニングマンとはアメリカの砂漠の真ん中で行われる行事であり、1週間にわたって行われる。参加者はお金を一切使わずに各自が持ち寄った物資で「プラーヤ」(Playa)という平原に街を作り上げ、新たに出会った隣人たちと共同生活を営み、1週間後、すべてを元に戻す、というものだ。ちなみに、食料や水を持ち込まずに参加すれば死んでしまう可能性もある。その1週間で何をするのかというと、各自が自分のパフォーマンスを行う。壮大なアートを披露する人もいれば、小さく繊細な作品を見せる人もいる。ちなみに、仮設トイレと(食品の鮮度を保つための)氷は主催者側が支給してくれるそうだ。

◆こうして聞くと興味を持った方は少なからずいると思う。小欄も初めて耳にした時はすぐさま行きたくなった。だがチケットを手に入れるのはとても困難なので、人生で一回でも行ける機会があれば行きたいものである。このイベントの一番の魅力は一週間で人間、いやヒトから人間になるまでの変遷を肌身で感じられることだろう。何もない平原に参加者が集まり、持ち寄った物を使うことで、徐々にその枠組みが生まれ始め、最後には人間の作り上げた一つのアートとも言うべき街が誕生する。そして、その後再び平原に戻る。その過程ではまるでビックバンが起きているかのように、音楽、アート、野生が入り混じって次第に形となる、込み入っているが美しいものだ。人間の歴史を凝縮して一週間に収めたかのような充実感がある。

◆キュレーターのノラ・アトキンソン(Nora Atkinson)氏がこんなことを言っていた。「その作品を気にするのは自分の心が動かされるからなのか、それとも高価だから心を動かされて然るべきと思うからなのか?」現代芸術に対する痛切な問いだ。小欄が思うに、このバーニングマンは前者にあてはまるのではないかと思う。貨幣経済や商行為は禁止されており、見返りを求めない「贈り物経済」(Gift economy)と「親切なこころ」を大事にするこの行事においては作品自体は価値で善し悪しが決まったりはしない。それぞれの躍動やフィーリングにおいて、行事は燃え上がる。ビル街を歩いたり、狭く囲われた空気の重い作品展にはない、人間の感情が生き生きと大空と大地に駆け巡るその感動は現代芸術が欠いていたものなのかもしれない。

■生活する人数は約5万人というスケールもビッグなイベントだ。

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Pythonとジャスミンを創りました。好きな言葉は「知崇礼卑」です。