【コラム】「貞観政要」2022年01月03日 72回

◆トップに立つ者は自らを律し、諫言(かんげん)を受け入れるべきだということを物語るのは歴史だ。『貞観政要』には君主の歴史のエッセンスを絞り出して煮詰めた、重要なリーダー論が詰め込まれている。本書は中国史における貞観の治という太平を築き上げた太宗の言行録である。太宗はいかにして自分の手の中にある国を存続させるかをひたすらに追求し、実行した。その姿は後の帝王学にも影響を与えるほど、当時、いや今でも珍しいものであった。そう、太宗の追求したリーダーのあり方は現代にも強く通じ、人の先頭に立つならば是非とも意識したいものである。それを行わなかったリーダーたちがどうなったかは言うまでもなく歴史が示している。

◆太宗がとにかく大事にしたのは謙虚である姿勢と相手の意見を聞く耳を持つことだ。一つ目に関しては、皇帝がもつ絶対的な権力は諸刃の剣であり、それを横暴に振り回せば多くの犠牲を生んで失墜することだろう。権力をもつ者であるからこそ、自らを律して常に謙虚でありつつ皇帝としての務めを果たすことが必要だ。また、全て自分でやろうとするのではなく臣下に任せてみることも一つの方法である。権力を自分に一極集中させるのではなく、分け与えるような感覚で権限を分散させるということだ。二つ目の太宗が意識して行った特徴的な行動が「諫言(かんげん)」という目下の者たちからの忠告を聞き入れることだ。これは大半のリーダーが苦手とすることとも言えよう。人間は元々間違いを認めづらく、どうにかして自分の非をもみ消そうとするものだ。ましてやリーダーになればより一層自分は完璧であるように見せようとする意識が働いてしまい、間違いや失敗を認めなくなってしまう傾向にある。そうなってしまえば、一歩踏み外したら修正することができずにそのまま深い沼にのみ込まれていく。失敗を一度も起こさない完璧な人間がいるわけでは無いので、人の意見を聞き入れない者の運命は自ずと短くなると言える。

◆これだけを見てもやっていることは単純ではあるが、いずれもリーダーが特に苦手とすることだ。強くなればなるほど、地位が高くなればなるほど、人は失敗を恐れ、自分の歪んだ独裁状態に陥っていくものだ。だが彼らは滅ぼそうと思って滅んでいるわけではない。失敗への間違った恐れが終焉を招いたのだ。恥と見栄を捨て、竹のように柔軟にしなることが出来るものが長く長く伸びていくのだ。

■シンプルなものほど難しいものはない。

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Pythonとジャスミンを創りました。好きな言葉は「知崇礼卑」です。